腰痛や足のしびれで病院を受診すると、腰部脊柱管狭窄症と診断されることがあります。
しかし、腰痛全体で見ると腰部脊柱管狭窄症の占める割合はそれほど高くありません。
本記事では腰部脊柱管狭窄症の特徴や、手術の必要性について解説します。
脊柱管狭窄症とは
脳から出た脊髄(中枢神経)は背骨のなかを通り、身体の末端部につながっています。
脊髄の通り道が脊柱管で、何らかの原因により狭くなるのが脊柱管狭窄症です。
腰から下肢の症状を引き起こす場合、腰部脊柱管狭窄症と呼ばれます。
腰部脊柱管狭窄症の原因
脊柱管狭窄症は主に加齢が原因となって起こります。
中でも加齢にともなう以下3つの腰部疾患が、腰部脊柱管狭窄症の発症リスクを高めます。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎分離症・すべり症
- 変形性腰椎症
ここでは、脊柱管狭窄症の原因となる3つの腰部疾患について解説します。
腰椎椎間板ヘルニア
腰の骨(腰椎)と骨の間には、クッションとなる椎間板が存在しています。
椎間板は垂直の圧には強いのですが、前後左右からの偏った圧には弱い点が特徴です。
前側への圧力でヘルニアが背骨側に飛び出すと、腰部脊柱管狭窄症を発症しやすくなります。
腰椎分離症・すべり症
腰椎分離症は、腰椎の棘突起が椎体から分離する疾患で人口の5%程度に見られます。
分離がひどくなると椎体が前方へスライドし、脊柱管が狭くなり症状が出やすくなります。
すべり症も腰椎が前方へスライドし、神経圧迫を起こす点が特徴です。
変形性腰椎症
変形性腰椎症は、加齢にともない骨が変形する腰部疾患の一種です。
変形が起こった箇所で神経が圧迫されると、腰部脊柱管狭窄症を発症しやすくなります。
若いころのケガや重労働が原因で変形性腰椎症を発症するケースもあります。
腰部脊柱管狭窄症の症状
腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状が間欠跛行(かんけつはこう)です。
歩き始めてしばらくすると、痛みやしびれのために歩けなくなります。
椅子に座って休むと歩けるようになりますが、しばらくたつとまた歩けなくなります。
また、背中を反らした際に痛みが強く出る点も脊柱管狭窄症の特徴の1つです。
腰部脊柱管狭窄症の治療法
整形外科などの病院では、主に以下の治療法で腰部脊柱管狭窄症の改善に取り組んでいます。
- 薬物療法
- 装具療法
- 理学療法
- 手術療法
ここでは、腰部脊柱管狭窄症の治療法について解説します。
薬物療法
腰部脊柱管狭窄症にともなう症状は、薬物療法で緩和を図るのが一般的です。
まずはプロスタグランジンE1製剤で血行を促進して改善を図ります。
しびれには神経障害性疼痛治療薬が、痛みには非ステロイド系消炎鎮痛剤が用いられます。
歩けないほどの痛みに対しては、神経ブロックを行うケースも少なくありません。
装具療法
脊柱管狭窄症を発症すると、コルセットを着用して症状の悪化を図ることもあります。
コルセットにより体幹を安定させると、後屈を抑制して痛みを出にくくすることが可能です。
ただし、長時間の着用はインナーマッスルの筋力低下を招く恐れもあります。
理学療法
脊柱管狭窄症に対しては牽引や温熱、ストレッチなどの理学療法を行うのも一般的です。
理学療法により痛みの緩和や関節可動域の改善、筋機能の保持などを図ります。
また、体幹を安定させるためインナーマッスルの筋トレを行うケースもあります。
手術療法
上記の治療法で症状がまったく改善しない場合、手術療法が検討されることもあります。
特に両足のしびれや歩行障害、排便・排尿障害が見られる場合、手術によって改善を図ります。
神経圧迫を起こしている骨を取り除く除圧術などが代表的な手術法です。
脊柱管狭窄症は手術をしないと治らない?
手術による腰部脊柱管狭窄症の改善率は、年齢や症状の程度により異なります。
例えば80歳以上の方の場合、手術による改善率は平均で45.6%です。
若い方であればそれ以上の改善率が期待できますが、術後に痛みやしびれを残すケースもあります。
脊柱管狭窄症の手術をしても痛みやしびれが残るのはなぜ?
脊柱管狭窄症の手術をしても、およそ3割の方には改善が見られません。
その理由の1つが、痛みやしびれの原因が腰部脊柱管狭窄症ではない点です。
仮にお風呂で温めて症状が改善する場合、筋緊張や血行不良が発症原因の可能性があります。
そのため、手術は最後の手段に取っておくことがおすすめです。
手術をする前にセカンドオピニオンを受けるのがおすすめです。
腰部脊柱管狭窄症の主な症状は、腰痛というよりは主に両足のしびれです。
そのため、腰痛や片足のしびれがある場合はセカンドオピニオンを受けるのがおすすめです。
温めて症状が改善する場合は、整骨院や整体院での施術が有効なケースもあります。
手術は最後の手段に取っておき、まずは保存療法での改善を目指しましょう。