腰痛の8割は原因不明という話を聞いたことがありませんでしょうか?
そのため、腰痛は治らないとあきらめている方も少なくありません。
しかし、2016年におこなわれた調査で多くの腰痛の原因が分かりつつあります。
本記事では腰痛の原因と新たな問題点について解説します。
腰痛の8割が原因不明とされた理由
腰痛診療ガイドライン2012年版にかつて、以下のような記載がありました。
『下肢症状を伴わない腰痛の場合、その85%では病理解剖的な診断を正確に行うことは困難である』
2012年の朝刊紙に腰痛の8割は原因不明と書かれていたのをご記憶の方もいるかもしれません。
実際に病院で検査をしても、腰痛の原因が明確にならないケースもあります。
以上のことから、腰痛の8割は原因不明と現在でも言われる傾向にあるわけです。
腰痛の8割が原因不明は古い?
腰痛の8割が原因を特定できないとする論文は、1992年に海外の研究者により発表されました。
引用された論文は1970年~1980年と古く、MRIがまだ実用化されていない時代の話です。
現在ではより詳しく画像検査を行えるため、原因不明の腰痛が減少したと考えられます。
山口県腰痛スタディに見る腰痛の原因
腰痛の原因に関して、2016年に新たな調査結果が報告されました。
山口県腰痛スタディと呼ばれ、県内の整形外科受診者320人のデータをまとめたものです。
報告では腰痛の原因を以下のように分類しています。
- 腰椎椎間関節性…約21.3%
- 腰部筋膜性…17.5%
- 腰椎椎間板性…12.5%
- 腰部脊柱管狭窄症…約10.9%
- 腰椎椎間板ヘルニア…約6.9%
- 仙腸関節性…約5.6%
- 腰椎圧迫骨折…約3.1%
- 感染症・社会心理的要因…約0.6%
- その他…約21.6%
山口県腰痛スタディによれば、原因不明の腰痛は従来とは反対におよそ2割に留まります。
では腰痛患者にとって、山口県腰痛スタディは朗報といえるのでしょうか。
山口県腰痛スタディの限界について
山口県腰痛スタディは、腰痛学会に一石を投じる画期的な報告でした。
しかし、山口県腰痛スタディが必ずしも腰痛の改善につながっていない実態も看過できません。
山口県腰痛スタディの限界としては主に次の3点があげられます。
- 母数が少ない
- 腰痛人口の減少が見られない
- ヘルニアや狭窄症が腰痛の原因とは限らない
母数が少ない
山口県腰痛スタディのデータの元となる患者数は、県内の整形外科を受診した320人に過ぎません。
国内の腰痛人口が2,800万人とも言われる中、あまりにも調査対象が少ないのではないでしょうか。
また整形外科を受診した方のみが対象となっている点でも、おのずと限界があると言えるでしょう。
腰痛人口の減少が見られない
2012年の朝刊紙に、国内の腰痛人口がおよそ2,800万人と掲載されました。
2016年に山口県腰痛スタディが発表され、原因不明の腰痛は激減したとされています。
しかし、2019年の厚生労働省の調査では、腰痛人口がおよそ3,000万人とされています。
高齢化の影響もあるため一概には言えませんが、腰痛人口はむしろ増加傾向にあるようです。
ヘルニアや狭窄症が腰痛の原因とは限らない
山口県腰痛スタディでは、ヘルニアや狭窄症が原因の腰痛が従来に比べ増加しています。
しかし、ヘルニアや狭窄症が必ずしも腰痛の原因とならないことは医学的には常識です。
特に狭窄症に関しては、主症状が腰痛ではなく足のしびれとなっています。
原因が分かる≠腰痛を治せる
腰痛の改善に山口県腰痛スタディが役立っていることは間違いありません。
しかし、調査結果の限界からも分かるように、原因が分かっても腰痛が治せるとは限りません。
実際に椎間関節症や筋膜が原因の腰痛などに対しては、旧態依然とした治療がおこなわれています。
- ヘルニアが出ている
- 神経の通り道が狭くなっている
- 骨と骨との間が狭くなっている
上記の画像所見がある際に、どのように有効な治療ができるのかが今後の課題といえるでしょう。
シップや痛み止めが根本的な改善法でないことは言うまでもありません。
椎間関節症や筋膜などが原因の腰痛は整骨院や整体院がおすすめ
山口県腰痛スタディからも分かるように、腰痛の原因に関しては新たな発見がありました。
しかし、実際の治療は薬物療法が中心であり、報告が十分に生かされているとは言えません。
仮に椎間関節や筋膜、仙腸関節などが原因であれば、整骨院や整体院で見てもらうのがおすすめです。
まずは整形外科で検査・治療を受け、改善が見られない場合に整骨院や整体院を頼るとよいでしょう。